
夏の扉を
開けると
そこには
夏の空気だけが
存在していた
濃密で
かすかに
甘い匂いのする
夏の空間
夏の色恋

今なら
間に合うのかも
しれない
この扉の先にある
新しい世界に
行くことも
これから先
十年を
別の人と
生きることも
まだ
間に合うのかも
しれない

ここにいれば
安全なのか
向こうに行けば
安全なのか
扉の前で
逡巡してしまう
意気地なしという
君の声が
どこからともなく
聞こえてきそうだ

迷わず
僕は
この扉を
開けた

閉ざされた
扉は
開かない
私の心は
貝のように
閉ざしてしまった